BOOK

蒲田の逆襲、魅力があふれ出る街、蒲田

蒲田の多様性はBig Appleにも負けない

JR京浜東北線で都内南端の駅、蒲田。地方出身の私にとっては、東京に住み始めるまで知らなかった場所。東京に来てからも、ほとんど行くことのなかった場所。働き始めてからは、オフィスへの通勤の便がいいということもあって、同僚が住んでいた街。ドアツードアで40分程度で通える、という同僚の話を聞いて、いいなーと思うこともしばしば。何より朝の通勤時間帯には、JR蒲田駅始発の京浜東北線が1時間に数本あり、それを選んで乗れば座って通勤も夢じゃない、と聞いた当時は、残業が続き、若かったはずなのに今よりももっと毎日くたくただった私は、「蒲田ってなんて素晴らしい場所なんだ」と感じ入っていました。

私にとってそんな羨望の場所、蒲田について、もっと知りたいと思い、手に取った本が、『蒲田の逆襲』。タイヤでできたゴジラのオブジェ。これがさも当たり前のように公園にある場所なんて、想像をはるかに超えた素晴らしい場所に違いない、もっともっと知って、蒲田を愛したい。そんな思いで読んでみました。

歴史の中で発展と荒廃を繰り返した

東京が都会として拡大していく過程で、どんどん「東京」が膨らみ続け、たくさんの産業やそれにかかわる人々を寄せ付け、時代の変遷とともに、新しいものを受け入れ、古いものが排除されてゆく。空の玄関口、羽田空港にも近く、日本を代表する高級住宅街、田園調布にもほど近い絶妙な場所にて、様々な国からやってきた人が、日本に溶け込みながら、同時に出身国の空気感を醸し出しながら、気取らない日々の生活をしている場所。そのおかげで、普段着、すっぴん、眼鏡にマスク、サンダル履きでうろうろしていても、全く人の目を気にすることがなく、とってものんびりすることができる場所となっています。

第二次世界大戦の末期には、複数回にわたる徹底的な空襲によって、広範囲にわたり焼野原になってしまったり、そのあとには戦後の復興で再生する都市のうねりの中で新しい産業と人々を受け入れ、新たな街に生まれ変わっていく。今日のこの雑多な、なんでもありの街の様子も、もしかしたら10年後はガラッと変わって、すごく洗練された、ちょっと背伸びしないと歩けない街になっているかもしれないな、とも思うけど、次の瞬間、まぁそんなことはないだろうな、とも思います。

街を知る、生活を知る

週末の昼間は、いろんなテレビ局が街をぶらぶらする散歩系の番組を放送しています。バスで行くもの、電車で行くもの、東京を中心としたもの、地方に出かけていくもの。出かけて行った先で、その場に住む人たちとの触れ合いを楽しみながらストーリーが展開していくので、思いがけない出会いや偶然があったりで、何も考えず、ゆったり見ていられる番組が多く、中でもその場その場で暮らす人たちの生活や文化が、町の雰囲気を作り出しているのがわかると、とても興味深く見入ってしまいます。海外との行き来が再開したら、外国から来た人を連れて一緒に散歩しながらいろいろ見て回って紹介したいなと思います。そういう体験型のツアーを企画運営できるようになりたいな。